「出版業界の現状と書店の未来」
開催日 | 2025年5月7日(水)午後1時30分~3時 |
会 場 | メルヴェーユ6階「ヴァランセ」=JR桜木町駅から徒歩 |
講 師 | 有隣堂代表取締役社長 松信 健太郎 氏 |
有隣堂の松信健太郎社長は7日、横浜市中区の会議場メルヴェーユで講演(神奈川政経懇話会主催)し、出版市場の縮小や書店の廃業が続く中、新しい店づくりの取り組みについて報告。「読書は単なる趣味ではなく、人間形成の基盤」とし、今後も挑戦を続けていくとした。
社会のデジタル化に伴って、出版市場が縮小。16歳以上で「月に1冊も本を読まない人が6割」となるなど、書店の数もこの20年で半減したことを説明。有隣堂も書店事業の売り上げが減少し、事業縮小も選択肢に挙げたという。
一方で、読書習慣のある子どもは、国語だけではなく数学、理科の成績も高い傾向にあるというデータが存在。このため「子どもたちが健全に、知的に成長し、日本がもう一度輝きを取り戻すための道具として書籍は最も簡便で安価なツール」とし、事業の立て直しを決意した。
二つの新しい店づくりを開始。一つは、東京ミッドタウン日比谷に開店した「ヒビヤ・セントラル・マーケット」。アパレル、眼鏡、理容、居酒屋、書籍販売からなる「小さな街のような空間」をつくり、利益を増やした。
もう一つは、日本橋に開店した「誠品生活日本橋」。台湾を拠点とする誠品書店とタッグを組み、本や文具、雑貨を売るだけではなく、さまざまなイベントを開催して集客を続けている。
また、書店は値段や商品での差別化が難しいため、店のファンを増やそうとユーチューブにチャンネル「有隣堂しか知らない世界」を開設。登録者35万6千人の人気となっている。
まつのぶ・けんたろう 1972 年生まれ、早稲田大学教育学部卒。2007 年9月、株式会社有隣堂入社。同社執行役員、取締役、常務取締役、専務取締役、取締役副社長などを経て20年9月、代表取締役社長。24年9月から代表取締役社長執行役員。