2021年3月の定例講演会/東日本大震災から10年 -福島第一原発事故被災地の現状と課題-/飯舘村復興アドバイザー 前原子力規制委員会委員長/田中 俊一氏

演 題:東日本大震災から10年 -福島第一原発事故被災地の現状と課題-

日 時:2021年3月16日(火)午後0時30分~1時30分

講 師:飯舘村復興アドバイザー 前原子力規制委員会委員長   田中 俊一  


 神奈川政経懇話会は16日、3月の定例講演会をユーチューブによるライブ配信で実施した。福島県飯舘村の復興アドバイザーで前原子力規制委員会委員長の田中俊一氏が「東日本大震災から10年─福島第一原発事故被災地の現状と課題─」と題して講演。福島の復興・再生について「科学的合理性を持った国や県のリーダーシップが不可欠」と話した。共同通信社きさらぎ会と共催。

 田中氏は福島の抱える課題として▽4万人近い避難住民と避難解除が見通せない広大な土地の存在▽農林漁業の担い手不足▽見えない廃炉の進展▽放射能への不安▽農水産物などへの風評被害─を示した。その上で「課題が糸のようにもつれ合い、どう解きほぐすか方向性が見えない」と現状を分析した。
 復興を妨げる原因の一つに国の放射線防護基準を挙げ、放射性セシウムの食品流通基準について「(2012年4月施行の)新規制値は全ての国産食品が汚染している前提の厳しい規制。県民生活を顧みない政治判断だ」と指摘した。
 また「避難解除は復興の前提条件」とし、「放射線量は、山間部の一部を除きほとんど解除可能なレベルに下がった」と強調。一方で「国と地元には『除染を終了しなければ避難解除はしない』という約束があり、被ばく線量を下げるという本来の目的ではなく、除染自体が目的になっている」と疑問視した。

 

たなか・しゅんいち 1945年福島県生まれ。67年東北大学工学部卒。専門は放射線物理学。東北大で原子核工学を学び、当時の日本原子力研究所に入所。原子力規制委員会の初代委員長を務めた後、2017年12月から故郷の福島県で生活を始めた。一部を除いて避難指示が解除された同県飯舘村に住まいを構え、村の「復興アドバイザー」を務める。

1967年日本原子力研究所入所、企画室長、理事・東海研究所長、副理事長などを経て2006年日本原子力学会会長、07年原子力委員会委員長代理、10年高度情報科学技術研究機構会長。12年9月から17年9月まで原子力規制委員会の初代委員長。飯舘村復興アドバイザーには18年2月に就任した。