2019年5月講演会/消費増税を乗り切る企業の成長戦略/日本総合研究所副理事長/湯元健治 氏

日 時 2019年5月29日(水) 午後1時30分~3時

会 場 ホテル横浜キャメロットジャパン4階「フェアウィンドⅠ」

講 師 日本総合研究所副理事長  湯元 健治 氏


 日本総合研究所副理事長の湯元健治さんが「消費増税を乗り切る企業の成長戦略」と題して講演。10月に予定されている消費税引き上げについて「経済情勢が多少悪くても先送りはないだろう」と話した。
講演要旨は次の通り。
 ▽日本経済は第2次安倍政権が発足した2012年12月を底に回復が始まった。19年5月まで回復傾向が続いているとすれば、回復期間は78カ月で戦後最長を更新。今年1-3月期の経済成長率は2%を超えたが内需は弱い。プラスになったのは輸入が大幅に減ったためで、数字はプラスでも実体はよろしくない。
 ▽14年の消費税3%引き上げでは、駆け込み需要の反動で消費停滞が長期化した。社会保険料の負担増もあった。今回は上げ幅が2%で軽減税率もあり、実質的な上げ幅は1.6%程度。2兆円規模の対策も講じるので大きな落ち込みはない。海外情勢の悪化などで影響は増幅される。引き上げを前提に予算が組まれている。足元の経済情勢が多少悪くても引き上げるだろう。
 ▽米中貿易戦争の本質はハイテク技術と軍事的覇権争い。米国は17年12月、中国を「米国の安全保障上の脅威」と位置付けた。ファーウェイは米国の機密情報やハイテク企業の重要情報を盗み出しているとみている。ハイテク技術は軍事技術に転用されやすい。中国がレアアースの対米輸出を禁止するという臆測が出ている。
 ▽日本経済の実力を示す潜在成長率は、1980年代は平均4.1%、90年代平均2.2%、リーマンショック後は平均0.5%に下落した。今は1%に回復した。財政、社会保障などの問題解決には2%成長は必要。設備投資の活発化は最低限の条件で、労働力不足に対応するため女性、高齢者、外国人を活用し生産性を高めなければならない。

 


ゆもと・けんじ
 京大経済学部卒。1980年住友銀行入行、94年日本総合研究所調査部次長兼主任研究員、98年 経済戦略会議事務局主任調査官、2004年日本総合研究所調査部長/チーフエコノミスト、07年8月 内閣府大臣官房審議官、09年8月日本総合研究所へ復帰、理事就任、12年6月同副理事長。07年から2年間、内閣府大臣官房審議官として政府の経済財政分析や経済財政諮問会議の事務局として規制改革、労働市場改革、成長戦略などを担当。近年ではスウェーデン・モデルに興味を持ち、スウェーデン型経済システムを研究。
また、中国国家発展改革委員会主催セミナー、上海金融セミナー
(金融当局主催)、人民大学コンフェレンスにパネリストとして招聘、中国研究にも注力。日経CNBC「News Core」レギュラー・コメンテーター。経団連「経営・労働政策委員会」アドバイザー会議委員、言論NPO評価委員。