2018年8月の定例講演会/激動の北朝鮮情勢と日本/慶応義塾大学准教授・礒﨑敦仁 氏

日 時  2018年8月30日(木) 午後1時30分~3時

会 場  ホテルニューグランド本館2階「レインボーボールルーム」

講 師  慶應義塾大学准教授    礒 﨑 敦 仁 氏


慶応大学法学部准教授で北朝鮮の政治、外交が専門の礒﨑敦仁(いそざき・あつひと)さんが「激動の北朝鮮情勢と日本」と題して講演。拉致問題について「北朝鮮は無条件で被害者を帰国させるべきだが、それがかなわない以上、外交的な解決しかない」と話した。

講演要旨は次の通り。
 ▽日本で「なんで隣にあんな国があるんだろう」などと考える人が大多数では、希望的観測で議論しがちになる。その代表例はソ連崩壊などを受けた北朝鮮崩壊論だ。北朝鮮は「金王朝」を永続させるためだけに労力を集中してきた体制であることを忘れてはならない。
 ▽昨年4月、米朝が戦争しそうだという議論があったが、実態とはかけ離れたものだった。4月11日の最高人民会議に金正恩(キム・ジョンウン)委員長が出席した。予告された日に予告された場所に出席したということは、アメリカは攻めてこないと読んでいたからだ。
 ▽北朝鮮の非核化は9月がポイントだ。下旬の国連総会に金委員長が出席する可能性は、現時点では半分より高いと考える。2回目の米朝首脳会談が開きやすくなるが、出席しなければ、この楽観論は一気に悲観論に傾く。トランプ大統領の任期はあと2年。この間に北朝鮮も駒を進めておかないと得るものがない。
 ▽拉致被害者5人を奪還した日朝首脳会談から16年。(解決へ)日本は10年以上、北朝鮮に圧力を強めてきたが、目的と手段が混同した議論も多かったと言わざるを得ない。北朝鮮も対話局面に入った。拉致被害者を奪還する、日本人の生命、人権を守るという目的達成のため、その下にある手段は自由闊達(かったつ)に議論し、北朝鮮に対話を仕掛けていくことを望んでいる。

 

 

いそざき・あつひと 1975年 東京都出身。専門は北朝鮮政治・外交。慶應義塾大学商学部中退。在学中、中国・上海師範大学で中国語を学ぶ。慶應義塾大学大学院修士課程修了後、韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員(北朝鮮担当)、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロウ・ウィルソンセンター客員研究員を歴任。ほかに東京大学、静岡大学、東海大学、三重中京大学などでの非常勤講師も歴任。慶應義塾大学専任講師を経て2015年から現職。

単著『Understanding the North Korean Regime』(Woodrow Wilson Center, 2017)。共著に『新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社、2017年)、『東アジア分断国家』(原書房、2013年)、『新聞・テレビが伝えなかった北朝鮮』(角川書店、2012年)など。共編に『北朝鮮と人間の安全保障』(慶應義塾大学出版会、2009年)など。『現代用語の基礎知識』の「朝鮮半島」を10年以上執筆担当。北朝鮮政治外交に関する論文(和文、英文、韓国語、中国語)多数。