2015年11月講演会「動乱の世界情勢と日露関係」/新潟県立大学教授、青山学院大学名誉教授・袴田 茂樹氏

日 時  2015年11月9日(月) 13時30分~15時00分

場 所  ロイヤルホールヨコハマ 3階「シンフォニー」

講 師  新潟県立大学教授、青山学院大学名誉教授  袴田 茂樹 氏

 


 

 ▽最近の世界情勢は第1次、第2次世界大戦のあった20世紀前半に酷似している。エジプト・シナイ半島でロシア機が墜落した。IS(イスラム国)の犯行の可能性が強いが、ロシアはそれを認めたくない。ISへの軍事活動に対する報復という見方を認めると、政策は正しかったのかという国民からの批判が出てくることが考えられる。
 ▽冷戦時代というと非常に厳しいイメージがあるが、この時代は安定していた。世界を見る枠組みは、冷戦時代はシンプルで先も読みやすかった。長い歴史の中で冷戦時代の方が例外ではなかったのか。歴史の主役を果たしてきた民族や宗教、国家が二大陣営の枠にはめられ、独特の安定が生まれた。
 ▽プーチン大統領は柔道家で親日家、しかも大統領として強大な権力がある。だから、領土問題は大統領と安倍晋三首相の信頼関係で大きく前進するという見方があるが、私はそうは考えていない。領土問題の本質は主権侵害。主権国家として日本がどう対応していくのか、国際的に問われている。
 ▽領土問題では、平和条約締結後に歯舞、色丹2島を返還する日ソ共同宣言(1956年)と、4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する東京宣言(93年)がある。日本には共同宣言が現実的という意見があるが、平和条約締結は戦後処理を終わらせること。締結後に国後、択捉2島の領土交渉はないと考える。メドベージェフ首相の択捉島訪問などロシアの強硬姿勢に対して、日本は言うべきことはきちんと言うべきだ。