2025年7月の定例講演会/「タイフーンショット計画~台風の脅威を恵に~」/横浜国立大学台風科学技術研究センター長/筆保 弘徳 氏

「タイフーンショット計画~台風の脅威を恵に~」

開催日 2025年7月15日(火)午後1時30分~3時
会 場 県民共済みらいホール
講 師 横浜国立大学台風科学技術研究センター長 筆保 弘徳 氏

 台風の勢力をコントロールし、さらに恵みに変えようとの「タイフーンショット計画」について、横浜国立大学台風科学技術センター長の筆保弘徳教授が15日、横浜市中区の県民共済みらいホールで講演(神奈川政経懇話会と神奈川新聞社共催)した。2050年までを目標としており「僕の世代では終わらない。次の世代、次の次の世代にもつながるよう、関心を持ってほしい」と呼びかけた。
 同計画は、温暖化の影響で強大化する台風へ、無人航空機からドライアイスやヨウ化銀などの物質を投下して、勢力を弱体化。さらに風力で移動し、発電・蓄電する船でエネルギーを有効活用するという国家プロジェクトの一つ。「台風の勢力を10%弱めれば、被害は30%くらい減らせる。そして今の治水整備で守れるようになる」と強調。
 台風は地震や噴火など他の災害と違い、「予測可能」「被害発生の頻度が高い」「移動するので被害が広範囲になる」のが特徴。「予測精度が高まってきたので、避難できる人の被害(死者)は減ったものの、逃げられない建物の経済的被害は増えている。強い勢力のまま上陸する台風が近年増えているから」と説明した。
 台風被害は地形の影響を受けるため、コンピューターでシミュレーションし、ハザードマップを作成。「横浜は、台風が北西の長野など中部地方を通ると危険になる。各地のハザードマップをライフレンジャーというサイトで無料公開しているので確かめてほしい」と呼びかけていた。

ふでやす・ひろのり 1975年岩手県生まれ・岡山県育ち。 岡山大理学部卒。 京大大学院博士課程修了。 防災科学技術研究所、海洋研究開発機構、ハワイ大学などを経て、2010年に横浜国立大学准教授、20年に教授。21年に台風科学技術研究センターのセンター長。25年に科学技術分野の文部科学大臣表彰を受賞する。
台風や暴風雨などの発生・発達メカニズムの解明、防災対策・意識を図るための防災情報の開発と社会実装に取り組んでいる。気象予報士と防災士の資格を持ち、防災・教育教材の開発も行っている。